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8/18のSCC関西19に参加します。
 新刊は、シンジャのR18で、お互いに片思い拗らせて、お互いに一方通行な睡眠姦しちゃってるシンジャの話です。p60 500円
 

 とらのあなさんで、書店委託開始しております。http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/14/79/040030147971.html
 

 ※10/28 手持ち分完売したので、ご購入の方は書店でお願いいたします。

 以下に、本文見本を入れておきます。

月の無い新月の夜を照らすのは、空の星と地上の星。
 最近は色硝子を組み合わせたランプが流行りで、国営商館の軒先にいくつも吊るされています。賑やかで楽しいことが好きな王が治めるこの国は、夜だとて、色鮮やかに輝いておりました。
 我が麗しのシンドリアは、今宵も美しい。
 吟遊詩人に地上の楽園と謳われるのも、納得出来る程に。
 しかし、その楽園を作り上げた素晴らしい国王陛下は、現在、困った酔っ払い以外の何者でもございませんが。
「じゃーふぁるぅ、おれ、あるけない。おんぶして」
「子供ならともかく、もう25歳のくせに、王様のくせに、人の腰に縋りついて甘えたことを抜かすな!」
 シンは、泥酔していた。
 仕事を残して窓から逃亡し、供も付けずに街に下りて飲んだくれた挙げ句、仕事中の腹心の従者を呼びつけ、1人で歩けずおんぶを強請るとか、ホント、勘弁して欲しい。
 大変、非常に、すごく、見捨てて帰りたかったんですけど、現状どれほど迷惑な酔っ払いでも、この人は、素面の時には世界で1番素晴らしい王様で、私にとっては唯一絶対の主なんですよ。
 まぁ、今宵は、女癖の悪さまでは発揮していないようですし、そう見えないらしいけど私は腕力がある方なので王宮までおんぶするのは可能だし、と例によって例の如く妥協して受け入れてしまい、不機嫌な政務官は、ご機嫌に鼻唄を歌う酔っ払い王を背負う羽目になりました。
 悔しいことに、10年前に大喧嘩をして見捨てて帰った結果、道端で眠りこんだ主が財布をすられて路銀に困って以来、酔ったこの人を放って帰るという選択肢は、私には存在しないんですよね。メチャクチャ腹立ちますけどね。
「うちの酔っぱらいが、迷惑をおかけして申し訳ありません」
 代金を支払って店を出ようとしたら、先程、店で駄々をこねた王のせいで王宮まで走らされた店員を見つけたので、私は頭を下げました。
 彼が走らされた件は、私にも責任があります。午後に書類を持って行った時に椅子に括りつけておけば、こんな事態は防げましたからね(なので、明日はノルマ達成まで縛りつけること確定)。
 けれど、店員は、朗らかに笑ってくれました。
「いえいえ。今宵は、誉れ高き七海の覇王と世界最古の眷属という伝説に謳われる方々にご来店いただき、光栄の極みにございます。またのお越しをお待ちしておりますと、素面の国王陛下にお伝えください」
 シンドリアはいい国だなぁ。民も、苦労している者が多いから機転が利くし、何より優しい。
 私が少し感動していたら、酔っ払いの熱い手でペチペチ肩を叩かれました。
「うう、じゃーふぁるぅ……、おいおまえ、じゃーふぁるをよんでくれ」
「あんたは、誰の背中に背負われてるつもりだ!」

 シンドリアはいい国です。
 ・・・・・・王の酒癖の悪さが、玉に瑕ではありますけど。





「はい着きましたよ! この、酔っぱらい王!」
 悪態をついてみても、街の酒場から背負ってきた身体を乱暴に寝台に投げ込んでみても、文句など、どこからも出ませんでした。天蓋の房飾りが、ゆらゆら揺れるだけです。
 時刻は深夜。場所は、紫獅塔最上階の王の寝室。ベッドカバーには、シンドリア近海の貝から採れた染料で染められた糸で、繊細な刺繍が施されています。
 華麗に、そして荘厳に。王の部屋は、世界中の子供が憧れる冒険書の英雄にふさわしく整えられていますが、生憎、寝台にぐでっと横たわる部屋の主の現在の姿には、臣下として嘆かわしい程に、王の威厳の欠片もございません。
 寝台に腰掛けた私は、もう、深い溜息を吐かずにいられないですよ。
「なんで、酔っぱらうと私を呼びつけるんですか、あなたは・・・・・・」
 靴を脱がせて金属器を取り除きながら、私はぶつぶつとぼやきます。
 我が王が酒の味を覚えたのは、私と出会ってしばらくした頃。
 初めて酒を飲んだのはもっと前らしいけれど、つきあいで飲まされたその時は、病気の母が気になるので味わうどころではなく、私と出会ってすぐの頃は、私があまりに手が掛るので飲酒する余裕などなかったそうです。
 私が十分に懐いた頃、有名なワインの産地で人助けをして、とびきり上等な当たり年のワインを振る舞われ、………我が王は、酒の味に目覚めてしまいました。
 以来、新しい場所に赴くとその土地の地酒を探しに走り出し、新酒の季節には解禁日を指折り数え、めでたいことがある度に祝い酒を呷り、ストレスが貯まると浴びるように飲んで……大酒を飲んだら見境なく女性に手を出し翌朝にはそれを忘れている、という困った飲兵衛が出来上がったわけですよコンチクショウ。
 で、その飲酒の歴史の大半につきあわされ後始末をしてきたのが、10年前からお仕えしている一の従者たるこの私、というわけです。
 今日などはまだまだマシな方で、これまで、酔って外した金属器を探して一晩中走り回ったり(本人は酔っ払って寝ていた)、宴席で妻を口説かれて立腹する領主に土下座して謝ったり(人妻に手を出すなと、あれほど言ったのに)、所有権を主張する現地妻の集団から逃げ出したり(一夜で現地妻を6人も作りやがって)、それはもういろんな経験をさせていただきましたとも。おかげで、私の酔っ払いのお世話スキルは、かなり高くなっておりますとも。
 だから、酔ったこの人が私を呼びつけるのは、「ジャーファルに任せたからもう大丈夫」という安心感を得たい為であって、……私の顔が無性に見たくなったとか、そんなのじゃないってこと、ちゃんとわかっているんですけど、ね。
「本っ当に迷惑なのに、他の人が呼ばれるよりはいい、なんて、私は救いようがないな………」
 頭を抱えて呟いた言葉の後味は、苦くて。おまけに、頭痛がしそうに愚かしい。
 けれど、どうしようもないんです。

 これが、最初で最後の、私の、たった一つの恋だから。





 変な話ですが、初めて、シンのことをそういうふうに意識したのがいつなのか、はっきりとはわかりません。
 シンは、贔屓目を抜きにしても類稀に魅力的な人間で、旅先で出会う相手を片っ端から魅了していったので、ほんの一時接した相手にもこれほど好かれる人だから、救われて一緒に旅をしている自分が、好き過ぎる程に好きなのは当然だ、と疑問を感じなかったんです。
 情緒の発達に問題ありな子供時代を過ごしてしまった私は、どれだけ見ていても決して見飽きずにその姿に見惚れてしまうのは、シンの容姿が美しいから。シンの声をもっと聞きたい気持ちになるのも、シンの声が美しいから。シンに触れたくなるのも、シンの肉体が美しく素晴らしいから。だから自分は面食いなんだろう。
という発想しか出てきませんでした。
 確かに、酒場で女を口説く姿にイラッとしたり、娼館に向かう背中に寂しさを感じたりはしていましたよ。
 でもね、なにせ、私が人生で初めて嫉妬した相手というのが、出会ってからしばらく2人旅だったところに、3人目の旅の仲間になったヒナホホだったりしたので、強くて頼りがいがあって大らかで優しいヒナホホ相手ですら、最初は嫉妬せずにいられなかった自分はとても嫉妬深い性質で、シンが自分の知らない相手を構うのが嫌なのだろう、と考えていたんですよね。
 ドラコーンに対しても、最初は、シンと同郷で共通の話題が多く、バアルを共に攻略した間柄、というのでもやもやした気持ちになりましたし。
 マスルールたちに嫉妬しなかったのは、紹介される時、「ジャーファル、こいつの世話を頼むな」とシンから頼られたからだと思っていました。
 だからね、自分がシンに対して恋愛感情を抱いていると気がついたのは、なんと、20歳になってからなんですよ。
 あれは、シンと2人で、外交に出掛けた時のこと。
 旅の途中、大雨に降られた私たちは、慌てて、近くの町に駆け込みました。そうしたら、偶々その日、巡礼者の一行が町を訪れていて、普通の宿は全部満員。けれど、大雨の中で野宿したくありません。
なので、シンが、娼館に泊ればいいと言い出して、私は反論出来なかったんですよ。
 私は、それまで、シンを迎えに行く以外の用事で、娼館を訪れたことがありませんでした。
 そんな私が、一夜の相手を選んでさっさと部屋に向かったシンの背中を見送ってから、自分も相手を選ぼうとして……その場に並ぶ着飾った女性たちの誰にも性的欲望を抱けない己に、気づいてしまったんですよねぇ。
 娼館のランクは高かったですよ。さして大きくない町でしたが、その中では1番の娼館でした。居並ぶ女性たちも、金髪、銀髪、赤毛、茶髪、黒髪、青髪、と様々な人種やタイプが揃っていて、一般的な男性ならば、誰か1人ぐらいは好みに掠るのではないですかね。
 ええ、一般的な、異性愛者の男性ならば。
 けれど、私は、彼女たちに対して、人間として好感が持てそうでも、性的対象として欲望を抱けなさそう……つまり、勃たねばならない局面で勃たないに違いない、と確信出来てしまったわけです。
 だから、焦った私は、自慰をする時に己が何を思い浮かべていたのか思い出そうとして……シンに対して性的欲求を抱いていたことに、気づいてしまったのでした。
 ショックでした。すごく。
 我ながら間抜けですが、私は、その時まで、本当に、自分の性的嗜好をわかっていなかったんです。
 そもそも、幼児期に無茶な投薬を受けた私は、発育が悪くて、精通は16歳。なので、精通以前には、自分が女性の肉体に興味が湧かないのは精通していないからだ、なんて呑気なことを考えていました。
 その上、精通のきっかけは、偶然目撃したシンと女性の情事。
 徹夜で本を読んだ翌日がマハラガーンで、どうにも眠くて堪らなくなってきた私は、宴の途中で抜け出して、中庭の茂みの陰に座り込み、うとうとしてしまったんです。そして、茂みの向こうに現れたシンが、踊り子を押し倒す音で目が覚めて……少しでも動いたらバレる距離だったので、息も気配も殺して、一部始終を見ちゃったんですよ。
 飢えた獣のような獰猛さを宿した金色の瞳、性急に女性の身体を弄るシンの手、甘ったるい口説き文句、外だというのにシンに翻弄されてよがる踊り子の媚態。
 全てが、私の脳裏に強く焼きつけられました。
 暗殺者時代に、天井裏に潜り込みながら標的の情事を目撃したこともありましたが、そんなのとは全然違いました。
 そして、その夜、その光景は夢に出てきて……翌朝起きたら、夢精していました。それが、私の精通です。
 そんな経緯だったので、その後、溜まってきて仕方なく自慰する際に、その時のシンの情事を思い出す己に疑問を覚えなかったし、抱かれる踊り子の痴態ではなく、抱くシンの姿に興奮していることにも、気づけず……
 というわけで、その娼館での夜は、銀髪で年上の女性を選んで、「あなたは、幼い頃に亡くなった私の姉にそっくりです。なので、抱く気にはなれないのですが、抱きしめて一緒に眠って欲しいです」などと、苦しい嘘を吐いて乗りきることになりました。
 幸い、幼い頃に妹を亡くしたというその女性は私の作り話に同情して、口止めにも応じてくれましたから、シンにはバレませんでしたけどね。

 ああもう、ホント、自分自身のことなのに、本当に驚きましたよ!
 自分が、父であり兄であり仲間であり主であるシンに、欲情していただなんて!

 しばらくは混乱していたんですけど、一つ真実が判明すると、そこから、芋蔓式に、思い当ることが出てくるんですよねぇ。
 それまで自覚してなかったけど、私、宴の最中に酒で濡れたシンの指を舐めて咥えたくなったり、シンの匂いを嗅ぐとうっとりしてしまったり、全裸で寝ているシンに小言を言いつつもガン見してたり、してたんですよ。
反対に、煽情的な姿の女性を見ても全く興奮せず、寒くないのかとか、シンがこの相手をどう思うだろうかとか、そんなことばかりが気になってましたし。
 では、他の男性も性的対象に入るのか、というと、それは微妙な所で。
 ていうか、幼児期がアレだったせいで、私の美的感覚は歪で未熟で、景色や花や建物や宝石や工芸品や文字などについてはそうおかしな感性をしていないのですが、人間の美醜に関しては、シンが圧倒的に美しいことだけよくわかっているけれど、他は曖昧と申しますか。
 あの郷では、万が一にも標的に心動かされて任務を失敗することがないように、人を物として捕らえるよう指導しておりました。
 幼少期に植え付けられた習慣は根強くて、いまだに、初対面の相手に対しては、美醜より先に、隙があるとか無いとか、どれぐらい強いか、賢いのか、何か技能があるのか、などで判定しようとしてしまうんです、私。
では、親しい相手については、と申しますと、美醜より愛しさが勝るので、世間的に醜いと言われる姿になろうとも、好意的に受け入れてしまいます。
 昔、シンの長期外交中、寂しさを埋める為に、シャルルカンとヤムライハに食べ物を与え過ぎて太らせてしまって(マスルールは、同じ量を食べていても太らなかった)叱られたことがありますが、その時の私は、あの子たちを「かわいい」としか認識出来ませんでした。
 今も、あの子たちは、太ってても痩せてても、どっちでも可愛いと思っています。
 そして、特に親しいわけではない相手に関しましては、……うーん、例えるなら、普通の人にはオラミーの美醜がよくわからず、毛並みの美しさや、身体や尻尾や耳の大きさなどでしか個を識別できないように、私にとっての「他人」は、身なりを整えているとか、髪や肌が滑らかかどうかとか、鼻が大きいとか目元にほくろがあるとかはわかっても、総合して「美しい」のかどうかが、わからないんですよね。私の美しさの物差しが、「シンドバッド」だけなので。
 自分が持ち合わせないモノへの憧れという意味で、逞しい男性の肉体に見惚れることはあります。私、どう頑張ってもこれ以上背は伸びないし、鍛えてましたが、筋肉ムキムキな身体になれなかったので。
 ヒナホホとかドラコーンとか、惚れ惚れしますよ。とうとう私の背を追い越したマスルール(今16歳だからまだ伸びそう。最終的にシンより高くなりそう)も鑑賞しがいがあると、密かに思っております。
 でも、鑑賞以外の、触れたいとか触れて欲しいという熱を覚えたことのある相手、となると、……なんと申しますか、どこかにシンを思わせる要素がある相手、と申しますか。
 これまで出会ったたくさんの人々の中で、内面的評価を抜きに、触れたい気持ちになった相手と言えば、シンに似た髪型で髪色の商人とか、シンと同じぐらいの背丈で身体つきも似ていた船乗りとか、シンに似た声の吟遊詩人とか、言い方が悪いのですが、「シンドバッドの代替品」要素のある相手ばっかりなんですよね。
 だから、まぁ、つまり、私の性的対象は、「シンドバッド」なわけです。
 分析して変更不可能だと結論が出たら、もう、受け入れて生きていくしかありません。幸い、シンドリアで男色家は差別されておらず、シンは男色を嫌悪しているわけでもないし、と考えて、なんとか、己の嗜好を受け入れられるようになりました。
 誰に対してどんな想いを抱こうと、隠し通してしまえば、世間的には存在しないのと一緒ですしね。
 なので、一生、この想いを告げるつもりどころか、誰かに悟られるつもりもございません。
 私がシンを愛しているのは、このシンドリアでは幼子でも知っている事実。だから、その愛の中に、恋愛感情や情欲が含まれていることだけ隠し通せばいいわけですから、この先もなんとかなるでしょう。
 いえ、なんとかしてみせます!
 嘘や隠し事を押し通せなくて、一国の政務官が務まるものか!

 ……と、以前は思っていたのですが。






 太い眉と、通った鼻筋。彫りの深い整った顔立ち。
 今は瞼の奥に隠されている瞳は、シンドリアの海に沈む寸前の太陽の色で、艶やかに長い髪は、沈んだ直後の空の色。どちらも、私が愛して止まない色。
 机仕事が多くなった今でも鍛え上げられたラインを崩さない身体は、女官たちの細やかな世話を受けて、大型の肉食獣のように、精悍で優雅。
 我が王は、今宵も、胸が痛くなる程お美しい。
 故に、愚かしくも浅ましい従者は、己のみすぼらしさも忘れて、湧き上がる欲望のまま、王の首筋に顔を近づけてしまうのです。
 鼻を鳴らさぬよう注意して匂いを嗅ぐと、酒と香の匂いの奥に、シン本来の匂いが感じ取れました。
 ああ、いい匂い。
 冒険者だった頃に日々慣れ親しんでいた匂いは、この胸に、懐かしさと愛しさと切なさを掻き立ててきて。
「シン」
 身体の奥がじわりと熱を帯びてきて、気づくと、シンの頬を撫でていました。 
そのまま指先を滑らせて、生えかけのヒゲでざらつく顎を、喉仏を、くっきり浮かぶ鎖骨を、くすぐるように撫でても、シンは目を覚ましません。
 私は、緊迫感のある美しいラインを描く首筋に舌を這わせながら、シンの服を寛げていきます。
美しい人というのは得なものですね。上半身の衣服を緩めても、ちっとも見苦しさは感じませんでした。むしろ、官能的でぞくぞくします。
 衝動に踊らされながら、私は、シンの肌を撫でまわし、筋肉の逞しさと張りのある肌の滑らかさにうっとりと厚い吐息を吐きました。
「……シン」
 歩けない程にお酒が入った夜、シンはいつも、朝までぐっすりと眠っています。道端で寝入ってしまったら、悪漢に身包み剥がされても気づかず眠り続けるんじゃないか、と心配になるぐらいに。
 だから、10年連れ添った一の従者がどれだけ触れても、ちっとも気づいたりはしないのです。
「シン、愛しています」
 呟いた声は、震えていました。

 わかっています。
 これは、罪。

 シンに恋をするのも、性的妄想に耽るのも、己の心の中だけで終わることならば、罪とは呼ばれないでしょう。
 けれど、寝室に出入り出来る権限を利用して、万が一にもあなたに望まれるはずもない、男で、しかも醜いこの私が、浅ましい欲を孕んだ手で、国中の女性が恋い焦がれるあなたに触れるだなんて、それは罪です。重罪です。
 私がもう1人いたら、発覚した瞬間、発作的に殺してしまうに違いない、それ程の罪です。
 あなたが知ったら、……優しいあなたは、私の愚かさをも受け入れようとしてくれるかもしれないけれど、きっと、傷つくでしょう。これは、あなたが寄せてくれる信頼と親愛に対する裏切り行為なのですから。
「シン……」

 けれど、もう、我慢が出来ないのです。






 布をかき分けてまだ柔らかい陰茎を取り出し、根元を擦りながら敏感な亀頭をぺろぺろ舐めまわしていると、だんだん硬度と角度が増してきました。
「んっ」
 それが嬉しくて、口を大きく開き喉も開いて、奥まであなたを受け入れます。最初の頃はコツがわからず苦労しましたが、今ではえずくこともありません。
 歯を立てないように注意しながら、何度か頭を上下して口を離すと、陰茎は、大きく成長して、見事に天を仰いでいました。
 いつ見ても惚れぼれしますね。七海の覇王は、こっち方面でも覇王ですこと。
「ふふっ」
 浮かれた私の唇から、笑いが漏れます。
 口淫には、男女で性能差などありません。ただ、技術力の違いがあるのみ。相手が目を閉じていれば、尚の事。
 なので、観光客の市場調査やマハラガーンの打ち合わせで顔を合わせる売れっ子の娼妓(賢くて口が堅い)に教えを乞うて、自室でバナナ相手に練習を重ねてきた私は、悪くない腕前であろう、と思っております。いえ、他の男のものを咥えたことはないので、本当のところはわかりませんけど。
「シンは、これが好きなんですよね?」
 相手に意識が無くとも、男の身体で1番素直な部分が教えてくれるので、浅ましい夜を幾度も重ねて来た私は、シンの好きなやり方に気づいていました。
 尖らせた舌先で裏筋を舐め上げながら、右手の親指の爪を鈴口にねじ込みつつ、左手で袋を優しく揉むと、更に質量が増え、先走りが零れてきます。
 シンが、私の口淫で感じてくれている!
 それが可愛くて、愛しくて。
 私は、先走りで濡れるのも厭わず、雄々しくそそり立つ陰茎にすりすり頬擦りしてしまいました。
「シン、シン」
 愛しい名を呟きながら、私は、寝台の隣の机の引き出しの奥の板をずらして(こっそり引き出しを入れ替えた犯人は私です)、匂いのしない軟膏を取り出します。
 そして、性急に官服の裾を捲りあげ、躊躇うことなく、軟膏をたっぷり絡ませた指を後ろに差し入れました。
「んっ」
 意識して力を抜くと、この使われ方にすっかり慣れてしまった孔は、どんどん指を飲みこんでいきます。そして、見つけた前立腺を擦れば、どんどん解れていくのが自分でわかります。
「シンっ、あっ……シン!」
 指を増やした私は、シンの竿をしごきながら、シンの肩に頬を乗せ、シンの匂いを感じつつ、目を閉じます。
 5年前のマハラガーンで見たシンの情事の時の表情を、声を、思い出すと、腰が揺れました。
 あんなふうに熱く見つめられ、欲望を孕んだ手で触れられ、シンに貫いてもらえるのは自分なのだ、と思い込もうとします。
 いやらしい水音を立てて抜き差しするこの指はシンの指だ、なんて都合の良過ぎる妄想に耽ると、身体はどんどん熱くなりました。
 ああ、元暗殺者であった私を一国の政務官にまで引き立ててくださった相手に対し、なんたる不義か。
 わかっているのに、イイところを擦る指は止まりません。
 限界が見えてきた私は、再びシンの陰茎を咥えて、強く吸い上げました。
「ふッ!」
 熱い液体が口の中に吐き出された瞬間、私もまた達して。
 
 そして、死にたくなるほど落ち込むのでした。






「……」
 部屋の空気を入れ替え、濡らした布でシンの身体を拭い、シンを寝間着に着換えさせるという後処理を終えて、部屋を退出した私は、自室の扉を潜るや否や、頭を抱えて座り込みました。
 不埒な熱が収まった今、こみ上げる自己嫌悪と罪悪感で立ち上がれません。
 今夜の愚行は、これまで何度も繰り返してきたことです。発覚すれば、シンの側どころか、シンドリア国内にいることも出来なくなる最低の裏切り行為だとわかっているのに、終わった後で必ず、シンの信頼を裏切っている穢れた己に吐き気がしてくると知っているのに、それでも、私は、熱に溺れ続けているのです。
 こんなに浅ましく愚かな行為を始めるようになったきっかけは、例によって例の如く、酒でした。
 2カ月前のマハラガーンでは、私が狩りを命じられたので、いつものように片づけに回らせてもらえず、結構飲まされてしまいました。王が、八人将が、部下が、国民が、次々に酒を注いでくれて、逃げ出す隙もなくて。
 結果、余程徹夜が続いていない限り酒に強いはずの私でも、宴がお開きになって泥酔したシンを寝室に押し込める頃には、それなりに酔いが回っていたのです。
 だから、シンを寝かしつけようとして逆に寝台の上に押し倒された私は、顔を近づけたシンの意図を察することも、避けることも出来ず、唇を重ねてしまいました。
 シンの、唇。
 親愛の情を籠めて額や頬に唇を寄せられたことはありましたが、それとは全然違います。
 もちろん、私は、この口づけが無意味だとわかっていましたよ。その夜は銀髪の踊り子が居たので、その娘と間違えられたのでしょう。
 けどね、シンにとっては数えきれないほど行ってきたことでも、私にとっては、初めての口づけです。
 その後、シンはすぐ眠ってしまいましたが、恋を自覚した私にとって、恋焦れるシンからの口づけが、どれほど甘く感じられたことか。
 この夜の私は確かに酔っていましたが、私は、シンと違って、酔っても記憶が無くならないタイプです。
 その後、くちづけのことを思い出せないどころか、反芻するみたいに1日に何度も思い返し、その度に切なさと熱が積もっていって。
 その数日後に酔っ払った王を介抱する時、とうとう、そういう意図を持ってシンの肌に触れてしまったのでした。
 恋うる相手の肌に触れる快楽は、どうしてこんなに、熱く甘いのか。
 それから後は、坂道を転がるように堕ちていきました。
「シン……ごめんなさい」
 呟くと同時に、目から液体が零れます。
 謝るぐらいならしなければいいし、誰の耳にも届かない謝罪なんて、自己満足以外の何者でもない。
 私が泣いたって見苦しいだけで、何の意味も無い。
 わかっているのにそうせずにいられない、己の浅ましさが、愚かさが、本当に嫌で。
 嫌で。嫌で。
「アルサーメンとの戦いで、あなたを守って死ねますように」
 こうして、今宵も、せっかく、救ってもらって、拾ってもらって、家族として愛されて、仲間として心許されて、部下として信頼されているのに、シンに知られたら悲しませてしまうような願いを口にしてしまうのでした。
 いつまでもダメな子で、本当にごめんなさい。


~中略~


 服をめくって拝んだ肌は、今宵の月のように白い。
 ジャーファルは、見た目からは想像出来ないが歴戦の戦士なので、白い肌には、大小様々な傷跡が散りばめられている。本人は卑下するが、俺には、ジャーファルの全ての傷が愛おしい。
「ジャーファル、お前が生き抜いてきた証を、どうして愛さずにいられようか」
 俺に出会う前の傷、俺を庇って出来た傷、俺は、一つ一つの傷にキスを落としていく。
 ジャーファルの肢体は、女性のような柔らかさは無いが、男臭さも感じられず、無性的。匂いも無いしな。
 股間に存在する男の象徴も、瞳以外は極端に色素が薄い性質なので、二十歳を過ぎた男だというのに、性を知らぬ子供のようにきれいな色をしていた。
 いや、実際、ジャーファルは「きれい」なのだろう。
 忠誠と信義を己の柱とし、仲間への家族愛と幼子に向ける慈愛を両手に抱えて、己自身の為に何かを望むことが滅多に無い、ジャーファル。
 あまりにも献身的なその働きに見合うかどうかはわからないが、地位も権力も富も手にしているのに、それらを自分の為に使おうという発想が出てこない程の無私は、「きれい」と評していいはずだ。
 国の為、民の為、仲間の為、そして何より俺の為に、ジャーファルは、日々、身を粉にして働く。
 そんなジャーファルだからこそ、本人は、暗殺者時代に奪った命の重みにばかり気を取られて、卑屈なほどに卑下するが、永劫に罪が消えずとも、俺は、ジャーファルの傷を、生を、肯定し続けるだろう。
 愛しい、俺のジャーファル。
 もし俺が、生涯を共にし死後も一緒に地獄へ赴く相手を誰か1人選ぶならば、その相手は、ジャーファルしかいない。
 俺は、この胸から溢れそうな愛を注ぐつもりで、眠るジャーファルの唇を啄ばんだ。薄い唇は、宴席の最後にデザートでも摘まんでいたのか、ひどく甘かった。
「っ」
 ジャーファルが吐息を漏らすが、意識は戻らないようだ。
 我が国でマスルールの次に気配に聡いジャーファルが、泥酔しているとはいえここまで無防備に眠ったままなのは、相手が俺だからだろう。
 俺は、ジャーファルに受け入れられ、愛されている。
「だからと言って、こういうのはどうかと、一応、思ってはいるんだが……」
 そう言いながらも、顔を近づけてもう一度口づける。今度は、深く。
 唇を割り開いて中に入り込み、大人しい舌を舐めると、息苦しいのか、ジャーファルが寝返りを打とうと身動いだ。
 そんな小さな抵抗をも赦さず、肩を掴んで身体を寝台に固定して、ジャーファルが感じる上顎と舌先を執拗に責める俺は、我ながら酷い男だ。
 これは、捧げられた忠義と信頼と親愛への裏切り行為に他ならない。
「だが、止まらん。赦せ、ジャーファル」

 俺は、ジャーファルの下肢に手を伸ばした。


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プロフィール

HN:
水鏡
性別:
非公開
自己紹介:
シンジャでジュダ紅な字書き。
スーパーチートでカリスマなのに人間味あるシンドバッドと、シンドリアの母で狂犬なジャーファルが気になって仕方ありません。若シン子ジャとか、ホント滾る。
ジュダルちゃんと紅玉ちゃんは、可愛くキャッキャウフフしてて欲しいです。
アリモルとシャルヤムは公式だと思っております。

 

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